エリザベスとペドロ

これから紹介する『魂の伴侶-ソウルメイト』の物語はすでに知っている人もいるかも知れない。木曜夜8時からフジテレビで放映されている「アンビリーバボー」というビートたけしの登場する番組で「感動のアンビリーバボー」のコーナーで紹介されたからである。これはエリザベスとペドロというワイス博士の二人の患者が、不思議な糸に操られるようにめぐり会い、結ばれるまでの話である。ソウルメイトという言葉はこの物語から人々に認知されていったと私は考えている。ではその物語に入ろう。

  <エリザベス>

 エリザベスは米国フロリダ州マイアミに自分の会計事務所を持つキャリアウーマンで、すらりとした体つきに長い金髪の魅力的な女性で、ワイス博士を訪れたときは32歳のときであった。生まれはミネソタ州の田舎で両親は農場を経営していた。厳格でときとして感情が爆発し、エリザベスをののしる父親に対し愛情深く思いやりのある母親にエリザベスは強いきずなを感じていた。その母がエリザベスがワイス博士を訪れる8ヶ月前に突然すい臓ガンでなくなったのである。エリザベスは最愛の親友であり、助言者であり、最も近しい友人を失った悲しみに何ヶ月も泣いて過ごす日々が続いたのである。ワイス博士の『前世療法』を読んでいたエリザベスは、ワイス博士の元で母親と一緒に過ごした前世を探し出し、神秘的な体験をすることによって、母親と再会できるのではないかと期待したのだった。
 エリザベスの最初の前世体験は12,3才で亡くなった少年の生涯であった。父と一緒に航海へでて夜に嵐にあい真っ暗な海中に落ちて亡くなったのである。その体験後エリザベスはずっと暗闇が怖くて家では電気をつけっ放しにしていたが、この症状がはっきりと良くなったし、マンションのプールやジャグジーで何時間も過ごすことが出来るようになった。だがこの体験で彼女の母親を見つけることはできなかった。
 次のセッションでエリザベスは2000年前のパレスチナで過ごした少女時代に退行した。彼女の名前はミリアムといい、父親はエリといった。父は粘土から鉢やつぼなどを作り村人や時々村を通りかかる商人に売る仕事で生計をたてていた。だがこの時代はローマからの侵略者による圧政の時代であった。その当時、ローマの軍人たちは、パレスチナに住む初期キリスト教徒を頻繁に苦しめていた。彼らは自分たちが楽しむためだけに、残忍な迫害の遊びをした。軍人たちは、エリの両足をロープでしばり、馬に乗った軍人が、エリを引きずって走ったのである。エリはこの試練を何とか生き延びたが、恐怖に震える娘を前に軍人たちはまだ満足しなかった。今度は、二人のローマ兵が、自分たちが馬になったつもりで父親をさらに引きずりまわし始めたのである。このとき大きな岩に頭を強打した父は致命傷を負ったのだった。軍人たちが倒れた父親をおきざりにしたあと、彼女は激しい怒りと、憎しみの涙にくれた。彼女は血のしみが落ちたほこりまみれの路上で、父親の頭をひざの上に抱きかかえて、体を前後にゆらしていた。彼はもはや口がきけず血が口からしたたり落ちていた。死は間近にせまっていた。「お父さん、とても愛しているわ」光を失いつつある彼の目を悲しげにのぞきこみながら、彼女はやさしく彼にささやいた。彼の目が彼女をじっと見て、わかったよ、とまばたきして彼は永遠に目を閉じたのである。その後夕日がその日の終わりを告げるまで、彼女は父の体をゆすり続けたのだった。
 その後のセッションでエリザベスは今度は数世紀前のアイルランドで女性であった人生に退行した。その女性は親が決めた相手と結婚するが、その相手は大酒を飲んでは彼女を殴るのだった。ワイス博士はその夫が現在のエリザベスの近くに生まれていないかと思いエリザベスに尋ねてみた。するとエリザベスはその夫が今生、1年半前につきあっていた銀行員のジョージであると言った。ジョージが彼女に暴力をふるうようになって、彼女は彼とつきあうのをやめたのである。彼女は暴力のカルマから脱したのだった。アイルランドの女性は暴力的な夫が酒場のけんかで殺されたあと、ジョンという男性と知り合い、一生くらしたのである。彼女はジョンをとても深く愛していた。エリザベスはトランスから目覚めた後、意識が現実に戻ると、しくしく泣き始めたのである。ワイス博士がその理由をたずねると、彼女はこう答えた。
「彼をとっても愛していたからです。二度とあれほどまで、誰かを愛することはないと思います。私があれほど愛し、あれほど私を愛してくれた人に、私は今まで会ったことがありません。あの愛がなかったら、私の人生は絶対に完全になりません。完全に幸福になることもできません」
ワイス博士は、そんなことわからない、別の体に宿ったジョンに出会って激しい恋いにおちるかもしれない、となぐさめた。すると、
「私をなぐさめてくれるのね。あの人をこの世で見つけるより、宝くじに当たる可能性のほうがずっと高いと思います」
と言うのだ。エリザベスは繰り返してきた不遇な男性関係に絶望的になっていたのだった。ワイス博士は、宝くじに当たる確率は1400万分の1だったな、と考えていた。
 いくつもの過去生を思い出したにもかかわらず、エリザベスはまだ深い悲しみに苦しんでいた。そこでワイス博士は過去世退行ではなく、別な方法を試みた。まずいつもどおり彼女を深い催眠状態に導いて、美しい庭を心に思い描かせその庭で休息させる。そしてそこに誰かがやってくるが、彼女にその人物と交流できると助言するのだ。すると彼女は死んだ母親に会ったのだ。母親は、エリザベスに男女関係に関して助言してくれた。そして最後にエリザベスに、あせらないように、とても大切なことが起こるが、自分自身を信頼しなさいと言ったという。ワイス博士は何が起こるのか尋ねたが、エリザベスにもわからなかった。
 次回のセッションでエリザベスは遊牧民が住む国での人生に退行した。彼女は女性で夫は狩と略奪の旅に出ていた。そのときに馬の大群に乗った敵が戦士を欠いた村に襲ってきたのだった。彼女の夫の両親が、刀でまず最初に殺された。つぎに彼女の小さい赤ん坊が槍で突き殺された。そうして村の住人は彼女を含め数人の女性以外は皆殺しにされたのである。彼女は、どうか死なせてくれと哀願したが、敵の大将はそれを許さなかった。戦利品としてもらわれていったのである。そして年老いてやっと自殺が認められたのだった。ワイス博士は、時間を少しさかのぼり、彼女が結婚した夫が誰か聞いてみた。しかし、エリザベスはわからなかった。だが夫の母親がエリザベスの死んだ母親であることを発見した。エリザベスはやっと母親に過去世で会えたのだった。ワイス博士はその国の名前がわかりますかと聞いてみた。すると、
「いいえ、アジアのどこか北の方だと思います。おそらく中国の西です・・・私たちは東洋人の顔をしています」
という答えであった。

  <ペドロ>

 ペドロはメキシコ人で、父親は大会社や工場をいくつも所有しており経済的にも、政治的にも特権階級と呼べる家に生まれた。とてもハンサムな男性でありウイットに富んだ人柄であった。だが彼もワイス博士を訪れる10ヶ月前に最愛の兄を自動車事故で亡くしていた。ワイス博士を驚かせたのは10ヶ月も経つのにペドロが兄の事故死にいまだに悲嘆にくれているということであった。通常それぐらいの期間が過ぎると悲しみは次第に薄らいでいくものだからだ。ワイス博士はペドロの心の奥に、もっと何かの深い絶望感が存在していると考えた。
 最初の診察でワイス博士は退行催眠を行わず、ペドロの状況を知るための問診だけで終わった。ペドロはそこで、女友達も何人かいたが、その誰とも真剣な関係を持つことはなかったこと、また何故か母親がペドロの女友達を気に入らず何か欠点を見つけだしてはペドロの頭にそれをたたきこもうとすると語った。ペドロの2回目の診察でペドロはワイス博士に2回も見た全く同じ夢を語った。美しい白いドレスを着た60代か70代に見える老女が現れ苦しみにゆがんだ顔でペドロに何回も次のように同じ言葉を繰り返したという
「彼女の手をとりなさい・・・彼女の手をとりなさい。今にわかります。彼女に手をさしのべなさい。彼女の手をとりなさい」
ワイス博士は誰の手をとれと言っているのかとたずねてみたが、ペドロにもわからないという。
 その日の退行催眠でペドロはモンゴルでの遊牧民として過ごした人生に退行した。彼の両親はその遊牧民の指導者であり、彼は勇敢な騎馬兵かつ狩人だった。彼は村で一番美しい少女と結婚し子供が一人いた。彼女は子供時代の遊び相手であり、彼は覚えている限り、ずっと彼女のことが好きだった。ところがある日彼が留守にした村に返ってみると、村が襲われて村人は虐殺されていたのだ。死体があちらこちらに散乱し、馬も家畜も姿を消していた。丸型のテントは焼き尽くされていた。この大虐殺を逃れた者は一人もいないことは明らかだった。東方からの「侵略者」の仕業だった。ペドロは絶対に復讐してやると誓ったが、夢も希望も失い打ちひしがれた。
 次の診察でペドロはイギリスの軍人の人生に退行した。本国から遠いところで、スペインの要塞を攻撃する場面である。彼は岩を乗り越え砦を突破し細いトンネルを走っていた。彼が暗いトンネルの前方に小さな出口を見つけた瞬間「うわー」と叫んだ。隠れて待ちかまえていたスペイン兵に刀で首筋に斬りつけられたのだ。ペドロは首を押さえながら大きくあえいだ。イギリス兵の人生は終わったのだ。その後ペドロの慢性的な首と左肩の痛みは2,3週間のうちに次第に消えていった。彼はそれまでこの痛みのため何度となく医者に相談していたのだ。もちろんこの痛みが何世紀も前の致命的な刀傷が原因だと気づく医者は一人もいなかった。
 次の診察でペドロは恋人との間を引き裂かれる男性の人生に退行する。家族から無理矢理修道士にされてしまったのだ。だが修道院の僧院長が交通事故で死んだ兄であることを発見した。ペドロはとうとう兄に会えたのだった。その人生の回顧が終わるとペドロはいきなり別の人生に引き戻された。かれは突然「行かなければなりません!」と叫んだ。ワイス博士はそのまま行かせることにした。
 彼はしばらく沈黙したあと、状況を説明しはじめた。
「私は地面に横たわっています。ひどくけがをしています。・・・近くに兵士がいます。彼らは私を地面や岩の上を引きずっていきました・・・私は死にかけています」
「私は頭と脇腹にひどい傷を負っています」
このあわれな男は兵士たちの欲求不満の解消の犠牲になったのだった。その男の娘が泣き叫びながら彼のそばにやってきた。そして、その男の頭を自分のひざの上に抱いて一定のリズムで体を前後にゆらしたのだった。娘に語りかけようとしたが、もはや一言も発することができなかった。
「愛しているわ、お父さん」
彼は娘がやさしく言うのを聞いた。そしてそれが彼の最後だった。
 ワイス博士は、ペドロの話すこの物語に深く引き込まれていた。そえゆえエリザベスが退行した物語とおそろしく符号していることに気づかなかったのだった。


 エリザベスとペドロはワイス博士のもとを同時期に訪れていた。だが、この二人ともワイス博士の数多い患者の一人であり、別々の日にオフィスを訪れていたので二人が出会うことはなかった。ある日ペドロが退行催眠を行っているとき、彼は以前退行したことのある軍人に引きずられて死んだ人生に戻っていた。ワイス博士は、おそらくその時代からまだ学ぶべきことがあるのだろうと考えた。ワイス博士はペドロに娘の顔をよく見るようにうながして知っている人かどうかたずねた。だがペドロは「私は彼女を知りません」としか答えなかった。そこでワイス博士は自分の名前を思い出させようとした。しかしペドロは自分の名前が思い出せなかった。その時、何かがワイス博士の心の中に浮かんできた。そしてワイス博士は、大声で「エリ」と言ったのだった。するとペドロは、
「えっ、どうして知っているのですか?」
「そう、それが私の名前です。エウリと私を呼ぶ人もいます。エリと呼ぶ人もいます・・・どうして知っているのですか? あなたもそこにいたのですか?」
と聞いてきた。ワイス博士は正直に言うしかなかった。
「わかりません。ただ、心に浮かんできたのです」
 その晩、この出来事に驚いたワイス博士の心にパズルの一片が突然飛び込んできた。一瞬のうちにワイス博士は気づいたのだった。ペドロのこの物語はエリザベスのパレスチナでの記憶と完全に表裏一体だったのだ。二人は父と娘だったのだ。ワイス博士は、前世でも一緒だったという人々にもセラピーを行っていた。そうした人々は、普通は夫婦か、恋人同士だった。だがエリザベスとペドロのケースは逆だった。二人はまだお互いの存在すら知らないのだ。ワイス博士は二人の治療の記録を調べてみた。だが二人が結ばれたと思えるような記録が発見できなかった。ワイス博士は、おそらく二人は、いくつかの前世(又は全部)一緒にいたのだけど、お互いに気づかなかったのではないか、と考えた。その時エリザベスの中国の西方での人生を思い出した。彼女の家族が虐殺され、彼女を含め数人の女性が捕虜になった広大な平原での人生だ。ペドロはその同じ平原をモンゴルだと特定した。そして、旅から戻ってきた彼は、自分の家族も肉親も村の人々も、すべて殺されているのを発見した。ペドロはその時、彼の若い妻は、殺されてしまったと思い込んでいたが、彼女は捕虜として生きていたのだ。
 二人は、今生また一緒に生まれてきている。だが、そのことを二人とも知らない。二人とも孤独で、愛に飢えて苦しんでいた。相手がすぐ近くにいるのに!
 だがこの事はワイス博士を苦しめることとなった。ペドロにエリザベスのことを話すことも、エリザベスにペドロのことを話すこともワイス博士には許されていなかった。精神科医の守るべき厳格な規律があったのだ。プライバシーの保護と、守秘義務である。また、もしかしたらこれはワイス博士の思い込みにすぎないかもしれなかった。二人がつきあい始め、うまくゆかなくなって、ひどい状態で別れるかもしれない。怒りと恨みつらみが残るかもしれない。せっかく良くなった彼らの症状が元に戻ってしまうかもしれない。今までの治療が全部、だめになってしまう可能性だってあるのだ。結局ワイス博士は二人をそのままにしておくことにした。疑わしき時には何もしないのが一番と考えたのだ。

 何もしないと決めたワイス博士だったが、追いつめられていた。ペドロが治療が終わりメキシコに帰る時期が近づいていたのだ。ペドロがメキシコに帰ってしまったら、二人が出会う可能性は大幅に減ってしまう。ワイス博士はあせっていた。二人とも治療によって悲しみの症状は解消しつつあった。睡眠の深さ、食欲などの身体的な症状も良くなっていたが、孤独や、愛で結ばれた相手を見つけたいという願いはそのままだった。
 ワイス博士は一計を案じることにした。ワイス博士のオフィスに出入りするには、必ず待合室を通らなければならないが、二人の診察時間の予約を前後に入れて、そこで二人を(偶然に)出会わせようとしたのだ。二人は会った。ワイス博士は彼らの目はほんのしばらく見つめ合い、お互いに興味を持ったように感じた。だがそれはワイス博士の希望的観測かもしれなかった。エリザベスとすれちがったペドロは
「すばらしく魅力的な女性ですね」
とうっとりした口調で言った。ここぞとばかりワイス博士は、
「そうですよ。それに彼女は人間的にもすばらしいですよ」
と熱を込めて言った。だがそれはそれまでだった。ペドロの関心はメキシコでの次の仕事に向かっていた。
 2週間後、ワイス博士は再び二人の予約を前後に入れた。そしてこれがワイス博士にとって最後のチャンスだった。ペドロの最後の予約だったからだ。二人の二度目の(偶然の)出会いで、二人は再びお互いに見つめ合った。一回目よりもさらに長く見つめ合っていた。ペドロは軽くうなづいてにっこりした。エリザベスはそれに応じてにっこりした。彼女は一瞬ためらっていたが、それからドアへ向きを変えると、外へ出ていった。ワイス博士はエリザベスに「自分自身をもっと信じなさい!」と心の中で念じていた。ワイス博士のできることはすべて終わった。
 おそらく、そうなるようにはなってなかったのだろう。二人とも完全に幸福とはいえないにしろ、元気にはなっていた。おそらくこれで十分なのだろう。ワイス博士はそう考えたのだった。

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 ペドロはメキシコへ帰る前にニューヨークで2,3日仕事を行い、ロンドンへ2週間の出張をかねた休暇を入れることにした。エリザベスはボストンで会議に出席し、そのあと大学時代のルームメイトを訪ねる予定だった。二人は同じ航空会社の便に乗ることになっていたが、違う時刻の便であった。空港のゲートに着くと、エリザベスは自分の乗るはずのボストン行きの便が機体の故障で欠航になったのを知った。彼女はあわてて、友人に電話して計画の変更を知らせた。彼女は他の便でニューヨークへ行き、そこから翌日の早朝、ボストン行きの便に乗ることにしたのである。こうしてはからずも二人は同じ便に乗ることとなったのである。
 彼女がその便のゲートに行った時、彼はすでに、そこで搭乗の開始を待っているところだった。最初にペドロがエリザベスを発見した。彼は彼女がワイス博士のオフィスの待合室でほんのつかの間出会った女性であると、すぐにわかったのだ。
 よく知っているという感覚と、もっと知りたいという気持で、ペドロは一杯になった。彼女がいすにかけて本を開く動作を観察しながら、なぜかとても親しみのある感じがした。しかし、なぜこれほどに親しい感じがするのだろうか?ペドロは彼女にワイス博士の待合室で会う以前にどこかで会ったことがあるに違いないと頭をしぼった。彼女は誰かに見られていると感じて目をあげた。彼にすぐ気がついたが一瞬まゆをひそめた。だが、すぐに会ったことのある男性だとわかってにっこりした。直感的にこの人は安全だとわかったのだ。でもどうしてそうわかったのだろう?
 ペドロは自己紹介して二人は話し始めた。二人はすぐに、非常に強く互いに魅かれ合っていた。数分後、彼は二人が並んですわれるように、座席を変えてもらおうと言い出したのだった。エリザベスはペドロをとてもよく知っている人のように感じた。彼女は彼の身のこなしも話すことも、はっきりと知っていたのだ。ペドロはその時、何回も夢の中に現れた白いドレスを着た苦しげな女性の言葉を思い出した。
「彼女の手をとりなさい・・・彼女に手をさしのべなさい」
オーランド上空で、雷雨で飛行機がゆれ始めた。エリザベスの不安をそうな表情に気がついたペドロは彼女を安心させようと彼女の手をそっとにぎった。その時、彼女の心に電流が走った。この電流によって、数々の転生が一瞬のうちによみがえってきたのだ。
 こうして二人の再会は果たされたのだった。

 ワイス博士にエリザベスがボストンから電話をかけてきた。休暇を延長するという。ワイス博士はこの時二人が再会したことを知った。現在二人は結婚し、メキシコに住んでいる。娘が生まれたという。エリザベスがワイス博士に手紙を書いてきた。それにはこう書いてあった。
「本当にありがとうございました。私たちはとても幸福です。みんな先生のおかげです」
だが、ワイス博士は二人を幸せにしたのは自分だとは考えていない。確かに少し手は貸したが、自分がいなくてもいずれ二人は出会っただろうと考えている。世の中に偶然などというものはない、それが運命だったのだから。