◇パンタ笛吹氏のケース

 パンタ笛吹というのはもちろんペンネームで本名・牧まさおという人らしい。米国コロラド州ボルダーで寿司レストランの経営で成功した日本人である。このボルダーという地は2000年シドニー五輪の女子マラソンで金メダルを取った高橋尚子選手が合宿した場所として記憶している人もいるかも知れない。とはいえパンタ氏は現在は本の執筆はもちろん講演会やコンサート、映画出演と多彩な活動をしているという。そういえば2ヶ月程前、ミステリーサークルを扱った日本のテレビ番組に出演していた。
 このボルダーにリーという女性チャネラーがいてパンタ氏のセッションを行った時こう言われたという。

「・・・パンタ、私には、あなたのソウルメイトが、もうすぐそばまで来ているのが見えます。この秋から来年のはじめにかけて出会うでしょう。あなたよりも若い日本人です。その女性と出会うのに、ある本がきっかけになるでしょう。あなたはひとめ見て、強くひかれるものを感じるでしょう。
 彼女はあなたと同じような職業を持ち、自立して生きています。二人とも忙しく、世界中を飛び回っています。だから、一緒に住むということはありません。でも心と魂が、おたがいに通じあい、年に何回か会うような関係になるでしょう。彼女はとてもバランスのとれた思いやりの深い女性です。そして彼女は、あなたと同じような精神性を共用できる人です・・・」

 その年の11月、「聖なる予言」という本に興味を持っていたパンタ氏は、その「聖なる予言」のモデルとなったシャーマン(呪術師)とインカの遺跡を旅するツアーがあると聞き参加することにした。ツアー四日目のクスコで遺跡めぐりのあと昼飯をペルー料理店で食べていたときパンタ氏はななめ向かいのテーブルに日本人女性がひとり料理を食べているのに気がついた。パンタ氏は意を決してその女性に声をかけ一通り旅の雑談をした後、別れ際に夜にディスコに誘ったらオーケーしてくれたのである。彼女の名はアユミといった。高地のクスコは酔いもまわりやすくロマンチックな雰囲気だったが、パンタ氏にはそのアユミという女性に一世一代の劇的な出会いという深いつながりを感じなかったという。その証拠に次に会う約束もしないまま別れた。
 次の日パンタ氏は電話メモによるラブレターを受け取るがそれにはこう書かれてあった。
「I miss you. I love you always.」
(あなたがいなくなってさみしいわ、いつでもあなたを愛しています)
メモにはユミとマスオの名があり、パンタ氏は日本語のわからない電話交換手がアユミをユミに、マサオをマスオを聞き違えたものと思い、昨日の彼女が自分に送ったラブレターと思いこんでしまう。とはいえパンタ氏は昨日の女性が前世を何度もわかちあってきたソウメイトとという実感がわかず釈然としないものを感じていた。
 その旅のクライマックスは神秘の空中都市マチュピチュへの登山だったが一緒に行く予定であったシャーマンが突然いなくなり、その登山が一日早まった。その登山の帰りパンタ氏は登山口にある茅葺き小屋を通りすぎたとき、そこにおいてある記帳ノートに呼ばれているような感覚を感じたという。気になってそのノートをを見るとその最後に「ユミ・タカヤマ」という日本人の名を発見する。あっと思ってパンタ氏はポケットのメモを取り出しよく見てみると、発信元「マスオ」、発信先「ユミ・タカヤマ」になっているのに気づく。つまりそのラブレターは間違って自分に届いたものだったのだ。その時パンタ氏は記帳ノートの一番最後にユミ・タカヤマと書いてあったので本人がすぐそばにいるかもしれない。このラブレターを受け取るべき人に渡せるかも知れないと考え、最終バスの待つマチュピチュの入り口へ大急ぎで行ってみると4台の観光バスがとまっていた。そのバスに並んでいる10人程の日本人観光客を見つけユミ・タカヤマさんはいないかと声を掛けてみた。グループから少し離れたところに3人の女性グループがいたが、パンタ氏は声を掛ける前に左端の帽子をかぶった女性がユミ・タカヤマさんに違いないと直感したという(その女性の瞳がキラキラッと輝いたそうな)。するとその左端の女性が当惑した顔をして「ユミは私ですけど・・・」と答えたという。そのときパンタ氏の心の中に「ソウルメイト」という言葉が響きわたったという。観光バスが出るとガイドにせかされながらの5分間程で事情を説明し間違って届いたラブレターを渡し、お互いの住所の交換までしたというのだからアユミさんのときの対応とはえらい違いである。
 リー女史のセッションに始まりクスコでのアユミさんとの(偶然の)出会い、又(偶然に)間違ったラブレターをもらい、マチュピチュへの登山は(偶然に)シャーマンの欠席で日にちが変更になり、(偶然に)登山の記帳ノートを見たくなりユミ・タカヤマの名を見つけ、(偶然に)そのユミさん自身がそこにいやわせ二人が出会う。確かにパンタ氏が指摘するように偶然に偶然が重なった奇跡的とも言える出会いである。そして出会った人が直感的にこの人だという確信がもてる人であれば、パンタ氏でなくても「運命の人(ソウルメイト)と思いたくなるのも無理からぬところであろう。
 その後リー女史のセッションで、昔のイタリアの田舎で修道僧をしていたパンタ氏とユミさんが尼僧として働いていた過去世があったという。二人は愛し合っていたが別々の修道院だったのでいつも一緒にいられるようにと共にインドの救済病院に志願したという。ただ聖職者だった二人は結婚することはなかったそうだ。パンタ氏もユミさんも初めて訪れた外国がインドだったというのだから成る程と思ってしまう話である。